型取りのストレスを軽減、
治療の理解にも役立つ光学印象

先ほどもお話しましたが、今回導入したのは光学印象といって、口腔内の型取りをデジタル化する装置です。今まで型取りをする際には、印象材と呼ばれる粘土のようなものを口のなかに入れて、直接型(雌型)を取っていました。そこに石膏を流し込んで雄型をつくるわけです。

嘔吐反射などがある方ですと、型取りをすること自体が難しいですし、そういった問題がなくとも印象材が固まるまでの間は動けませんので、型取りの過程でストレスを感じる方も多かったと思います。光学印象の装置を導入したことによって、このプロセスを大幅に短縮することができました。

──型のデータはどのようにして取るんでしょう。

口腔内をカメラで連続撮影して、その写真から抽出したデータをもとにコンピュータがCGを生成します。専用カメラデバイスで口腔内を撮影するのにかかる時間は5分ほどで、撮影枚数は1200枚以上。そのあと写真から抽出した歯の立体データをソフト上で再現します。

モニター上で角度を変えて動かすこともできますし、歯の色や歯ぐき、詰め物などもフルカラーである程度再現されますので、写真よりもわかりやすいんです。「これ、すごいですね」と驚かれる患者さんも多いです。

口腔内を連続撮影するためのデバイス。1200枚以上の写真を撮影し、そのデータからCGを作成する

──技術的にまだまだこれから、という部分もあったりするんでしょうか。

いろいろ課題はありますが、型取りする際の選択肢が増えるのは、よいことだと思っています。光学印象は今後、主流になっていく技術で、レントゲンがアナログからデジタルになっていったのと同じことが、口腔内の型取りについても確実に起きると予想しています。

──患者さんの立場から見たメリットには、どんなものがあるでしょう。

治療を何通りもシミュレートして、それぞれのプランをCGで見ることができますから、わかりやすさという意味でも事前の理解が深まるという意味でも、大きな利点があると思います。

今までも私たちが理想と考えるプランA、その次にお薦めするプランB、Cというように、いくつかの選択肢を提示してきましたが、ワックスアップと呼ばれる実物大模型は、もっとも理想に近いプランAでつくることが、ほとんどでした。CGでしたら、プランAだけでなく、B、Cに関しても画面上ですぐにお見せすることができますし、それぞれを比較することも可能です。

治療プランを一緒に考えていくときも、ことばでだけでは想像しきれない部分って、かならず出てくるんですね。歯科医療って患者さんにとっては非日常のことなので、これはある意味当然だと思います。それが立体画像を見ることで、飛躍的にわかりやすくなるわけです。

──サグラダ・ファミリアの工期短縮と同じような効果があると。

そう思います。治療プランに対する理解を患者さんと共有しながら進めていく、というのは、歯科治療において非常に重要な要素のひとつです。そのためのツールとしてもデジタル・デンティストリーは非常に優れた特性をもっているのではないでしょうか。「百聞は一見にしかず」というのは、歯科治療にこそ当てはまることばだと思います。