歯科治療の分野で近年、
加速度的に進みつつあるデジタル化。
当院での取り組みについて、わかりやすくお話します。

組織管理主任 渡部 真麻

デジタル技術の活用で大きく
変わる、これからの歯科治療

デジタル・デンティストリーとは、「デジタル技術を活用した歯科治療」を総称することばです。手紙がメールになったように、医療の分野でもいろいろなものがデジタル化されています。その範囲が、ここ数年で一気に広がってきました。私が学生だった12〜13年前ですと、レントゲンも現像したフィルムを見る従来の方法が主流で、デジタル・レントゲンはまだ一般的とは言えない状態でした。この10数年でもかなり変わったんですね。

──当時からデジタル・レントゲンという技術自体はあったわけですか。

ありました。でも画像を造影するための感度が低く、診断する上で見落としが出る可能性が高いと言われていて、現在のようには普及していなかったんです。それがモニターやデジタル画像の解像度が高まってきたことで、あるポイントから従来のレントゲンと同じ、もしくはそれ以上に精密な画像を見ることができるようになりました。

現在は新規で開業する歯科医院のほとんどが、デジタル・レントゲンを導入しています。レントゲンに関しては、すでにデジタル・デンティストリーに移行が完了していると言っていい状態ですね。

──デジタルデンティストリーは型取りやクラウン、詰め物の作成など、さまざまな分野に広がりつつあると聞きましたが、課題となっているのは、どんな部分なんでしょう。

いま一番課題とされているのが、スキャンなどで取得したデータをどのように三次元の立体物に置き換えるかという問題です。デジタル化されたデータはソフトで三次元化してコンピュータ・グラフィックス(以下CGと表記)で見るわけですが、模型をつくるためには、少し前までいったん二次元の数値データに落とし込むのが一般的でした。

──機械をプログラミングするために必要な工程ですが、図面データになってしまうと、感覚的にとらえることが難しそうですね。

そうなんです。それが大きく変わってきたのは、3Dプリンタが登場してからですね。

──3Dプリンタというのは、コンピュータの三次元データから直接立体物を作ってしまう技術ですが、これによって何が大きく変わるんでしょうか。

スペインのバルセロナに(アントニ・)ガウディが設計したサグラダ・ファミリア教会がありますが、あれをつくる際にも建築用の模型を利用しています。図面だけでは伝わりにくい部分も模型で確認していくことで、より理解が深まるんだそうです。サグラダ・ファミリアをつくっているのはプロの職人さんたちですが、そのような人たちでさえ、図面だけではわからないことがある。もちろん、昔の模型は手作りだったでしょう。

現在はガウディの設計図を三次元データ化して、模型を3Dプリントすることで建築過程を確認、検証しているそうです。CNCフライス(*コンピュータ制御の切削加工機)なども導入されています。こうした技術を導入したことで、精度も高まり、工期も大幅に短縮されました(註: 2026年に完成予定。デジタル技術の導入により工期が150年短縮されたといわれている)。

工期が150年短縮されたサグラダ・ファミリア教会。同じことが歯科治療でも起きつつあるという

──一般に普及するのは、これからの技術ですが、この時期に導入を決めたのは、なぜだったんでしょう。

光学印象(*印象とは歯科治療における型取りのこと)は、まだ一般に普及しているとは言いがたい技術ですが、学会などに参加して、ここ数年で精度がかなり上がっていることを実感していました。技術的にも「まだまだな部分もあるかもしれないが、なんとか実用できるところまできたんじゃないか」という感触があったんです。

どこまで使えるのか、どういった部分が進歩しているのか。こういった部分は、やはり実際に使ってみないとわからないですし、使っていくなかで、治療におけるノウハウもいち早く得ることができる。そんなこともあり、導入するなら今このタイミングだと判断しました。実際、使えるケースを見極めることさえできれば、現状でも非常に優れたツールという印象です。