噛み合わせが悪い、歯ぎしりや
食いしばりが理由で歯が割れてしまう、

という方が増えています。
副院長 目代 匡

意外に見過ごしがちな噛み合わせ、
食いしばりによる歯の不調

一般に患者さんが歯科医院に通われる理由というのは、虫歯、歯周病などが多いですが、今回はその原因ともなる、噛み合わせ、食いしばりなどによる歯の不調について、お話してみたいと思います。

──噛み合わせの問題や、食いしばりが歯を悪くしたりするんですか。

はい。咬合、噛み合わせが悪くて歯に亀裂が入り、そこから虫歯になってしまう、あるいは噛む力が強くて、歯の当たりがきつい部分の歯周病が進んでしまうといった例は、近年かなり多くみられます。あるいは歯の根が割れてしまう、過去に入れた被せものが壊れてしまったりというケースですね。

こうした症状は、歯の当たりや噛み合わせの問題が原因で起こるわけですが、一般的な歯科治療で、こういった面に目を向けることは、まだまだ少ないのが現状です。

虫歯があるので虫歯を治療する、歯周病が進んでいたので歯周病を治療する。歯科治療ではこうした対処法が一般的だと思いますが、このやり方ですと、そのとき問題となっている症状は解決するものの、再発防止にはなかなかつながっていかないと思います。やはり根本原因となっている噛み合わせを直していかないと、同じことの繰り返しになってしまう可能性が高いんですね。

たとえば歯が割れてしまったので被せものをする。これ自体は治療としては間違っていないわけですが、噛み合わせや歯の当たりといった原因を対策しなければ、今度は被せものが割れてしまうでしょう。結果として歯医者さんに行かないで済む期間というのが短くなってしまうわけです。

──根本原因が解決されないかぎり、同じことの繰り返しになるということですか。なぜ噛み合わせや食いしばりで、そういった問題が出てくるんでしょう。

まず顎の動きについてですが、歯医者さんで「はい、噛んでみてみてください」と言われて口を閉じたときと、実際に食事をするときとでは、動きかたが大きく異なります。「噛んでみてください」と言われると、無駄な動きなく、すっと口が閉じて、歯も上下均等に当たることが多いです。

これに対して食事中の顎の動き、上下の歯の当たり方は、まったく均等ではありません。かなり三次元的な動きをしていて、ある歯の特定の部分に負担がかかってきたりします。これは夜寝ているときの歯ぎしりもまったく同じです。ちなみに寝ているときに歯ぎしりをしている人の割合はおよそ8割、寝ている時間のうち平均20〜40分は歯ぎしりをしていると言われています。

歯の位置、噛み合わせは患者さんごとに異なりますから、当たりの強いところというのも、それぞれ異なってきます。ある特定の歯に対して負担が集中すると、組織の破断が起こって、それが原因で歯周病になったり、虫歯になったりということが起きてくることがあります。

──そういったケースが近年増えてきているということですね。

そういうことです。いまは歯に対する意識が高い方が多くなっていますので、高齢になったときに歯を失ってしまって総入れ歯、というケースはかなり少なくなっています。たとえば都内の歯科医院ですと、この5年間で入れ歯をつくったのは2〜3例しかない、というような話もよく聞きます。

その代わり、長い間使ってきた自分の歯が、かみ合わせによる負担で割れてしまうなど、以前とは異なった問題が出てくるようになっています。たとえば歯が割れてしまって抜歯するというようなケースですね。

抜歯の原因を見ても、以前は圧倒的に虫歯や歯周病が多かったんですが、最近は歯の破折〈はせつ〉、つまりいまお話した、割れたり折れたりといった理由が、かなり上位に入ってくるようになっています。実際、私自身もそういった部分にフォーカスを当てて、患者さんにご説明する機会が増えていますね。

──歯の破折って、昔はあまりなかったんですか。

昔ですと50代、60代になったときには総入れ歯が当たり前、という感じでした。自分の歯がないわけですから、ある程度年齢を重ねていったときに、歯の破折で悩まれるということは、ほとんどなかったわけです。

割れてしまって抜歯ということになると、次は義歯をつくる治療になっていくわけですが、先ほどもお話したように、義歯をつくらなければいけなくなった元々の原因を追っていくと、噛み合わせが理由になっているケースがかなり多いんですね。もちろん歯磨きが不得意で虫歯や歯周病になってしまうという方もいますので、噛み合わせだけが破折の理由ではありませんが。