お口の機能も年齢とともに衰える
それが「オーラルフレイル」

フレイルとは虚弱、衰えること。より具体的にいうと、高齢になって心身の活力が低下してしまった状態のことをいいます。たとえば、日頃歩かないと足腰が衰えてしまい、出かけるのが面倒になってしまう。これもフレイルです。さらに足腰の筋力が衰え、これが進むと車イスの生活になってしまいます。

フレイルを防ぐためには栄養、身体活動、社会参加という3つの柱を意識することが重要だと言われています。よく聞く「健康のために1日これくらい歩きましょう」というのは、身体活動、運動によるフレイル予防です。健康寿命を延ばすという意味もあります。

ここ数年、口に関してもフレイルがある、と言われるようになりました。喋らないと噛む力も衰えるし、顔の表情も乏しくなってくる。歯が悪いからといって、やわらかいものばかり食べるようになると、噛む力もどんどん衰えていきます。放っておくと、歯周病の急速な悪化、虫歯の多発につながったりもします。

噛む回数が減ってくると、唾液も出にくくなります。口のなかが乾燥してしまうのでしゃべりにくくなり、人と話すのがなんとなく億劫になってしまう。粘膜どうしがこすれて「ヒリヒリする」「口のなかが熱っぽい」といった症状も出てきます。噛む力が衰えるだけでなく、こんな悪循環も起きてくるわけです。このような口に関するおとろえのことを「オーラルフレイル」と呼んでいます。

オーラルフレイルにつながる典型的な症状
あなたはいくつ当てはまりますか?

「むせる・食べこぼす」
「食欲がない・少ししか食べられない」
「やわらかいものばかり食べる」
「舌が回らない・滑舌が悪くなる」
「お口が乾く・口臭が気になる」
「自分の歯が少ない・顎の力が弱い」

自分の歯が残っている人ほど
歯周病予防が大切になってきます

総入れ歯になると噛む力は1/3程度まで落ちてしまう。そうならないよう、早い段階で対処することが大切

お口の健康という面から見ても、オーラルフレイルは大きな問題です。日頃の生活に張りがなくなってしまうと、歯もしっかり磨かなくなりますし、口を動かす回数が減ってくると唾液も出なくなります。結果、歯周病になってしまい、歯がどんどん駄目になっていくわけです。これもオーラルフレイルから起こる悪循環のひとつと言っていいでしょう。

高齢になっても自分の歯が7〜8本残っていればブリッジもできますし、ほかの治療法で治療することも可能です。しかし総入れ歯になってしまうと、噛む力は全部自分の歯がある場合の1/3程度まで落ちてしまいます。この違いは、かなり大きいと思います。そうならないよう、早い段階で対処することが大切です。

都筑区エリアの8020達成率は全国平均よりも高いという印象です

よく知られている歯の啓発活動に8020(ハチマル・ニイマル)運動があります。これは「生涯、自分の歯で食事を楽しめるよう80歳で20本以上の歯を保つ」ことを目標とするもので、1989年から厚生省(当時)と日本歯科医師会によって推進されてきました。

2017年6月に発表された調査結果では(厚生労働省による歯科疾患実態調査。2016年)、8020運動の達成率は51.2%となっていますが、当院のある都筑区エリアでの達成率は、健康意識の高さもあってか、もう少し高いような気がします。

自分の歯が残っていることは、咀嚼能力や食事が楽しめるという意味ではよいのですが、それだけ歯周病や虫歯のリスクも高くなります。残存歯が多い分、メンテナンスがより重要になってくるということです。近年の研究では血液中に歯周病細菌が混入すると、さまざまな健康問題(脳梗塞や心筋梗塞など)が起きることもわかってきました。

お口の健康寿命を延ばすという意味でも、高齢者が今まで以上に歯周病予防を意識すべき時代になってきた、と言えるのかもしれません。