親知らずを抜いたとき、
自分と同じような思いはしてほしくない。
それが滅菌にこだわる最初のきっかけでした。
ワタナベ歯科医院 院長 渡部譲治

治療ツールの滅菌済み
「基本セット」は500組以上を用意

──滅菌について最初に意識したのは、いつ頃のことですか。

近所の消化器外科の先生との会話がきっかけです。オペ(手術)の話をしていたとき、歯科の洗浄〜滅菌のレベルは外科と比べてかなり低いんだなとあらためて実感しました。開業から2年目(*1991年)、今から28年くらい前の話です。

’91年当時のワタナベ歯科医院。この年、開業医としていち早く滅菌設備を導入

その頃の歯科医では洗浄は手洗いが主流で、そのあとアルコールで拭く程度。「タービンを使う前に空回しをして、内部の水分を切ることが大事」と言われていましたが、それだけで本当にいいんだろうかという疑問は、ずっともっていましたね。自分で赤い染め出し液を用意して、実験したこともあったんですよ。

──どうなったんですか。

染め出し液の中で一瞬だけタービンをまわして、そのあとタオルできれいに拭き取って、もう一度タービンをまわしたんですが、内部から赤い染め出し液が、かなりの量出たんです。タービンの「空回し」も大事かもしれないけれど、これでは使い回ししているのと変わらないのかもしれない、と思いました。

──それからすぐに滅菌機器を導入したんですか。

開業医レベルで導入できる滅菌機器がないか調べてみたところ、当時はまだタイマー付きの圧力釜のようなものしかありませんでした。それをさっそく導入することにしました。当初は滅菌にも時間がかかったり、高温でタービンのローターがすぐダメになったり、さまざまな問題があったんですが、それでも患者さんごとに滅菌したツールを使うことには、大きな意味があると思っていたんですよ。

それ以来、タービン、コントラ、ファイル、スケーラー、超音波スケーラー、歯の根の治療に使うツール類など、患者さんの口の中で使う治療具はすべて滅菌処理するようにしています。

──滅菌には、どれくらいの時間がかかるんですか。

最新機器の機器の場合、滅菌にかかる時間は15分程度ですが、高温になるので、ツールが冷めるまで待たなければいけません。水をかけて冷却する方法もあるんですが、急激な温度変化はタービンの寿命を短くしてしまうので、できれば避けたいんですね。そんな事情もあって患者さんごとに新しいツールを用意するためには、それなりの数を用意する必要があります。

──ワタナベ歯科の場合、ツールはどれくらいの数を用意しているのでしょう。

基本セットと呼ばれる治療用ツールは500組以上用意しています。1日の平均患者数が260人程度なので、最大2日間、洗浄・滅菌作業が滞っても大丈夫という計算になりますね。実際に作業が滞ったことは一度もありませんが、なにがあっても万全だと思える用意をしておかないと、落ち着かないんですよ。

治療に使う「基本セット」は500組以上を用意。すべて個別包装されている