入れ歯専門の歯科技工士がいるからこそ、
できることがあります

──ワタナベ歯科の場合、火曜日と木曜日に入れ歯専門の技工士が来ているそうですが、技工士がいることで、どんなメリットがあるんでしょう。

その場で設計を相談できる、というのが一番の違いですね。スタディ・モデルと呼ばれる患者さんの口腔内を再現した模型を一緒に見ながら、「ここをこういう感じにしたいんですけど、できますか」と、その場で確認できます。外部の技工士さんにお願いすると、やりとりが書類になっていまうので、どうしても間接的になってしまいますし、確認するだけでもそれなりに時間がかかるので、患者さんの来院回数も、どうしても増えてしまいます。そこを大幅に短縮できるのが強みです。

技工士さんに患者さんのところまで来てもらって、一緒に確認してもらえるので「伝え漏れ」がない、というのも大きいですね。これは技工士さんともよく話すんですが、書類と実際に現場で伝えるのとでは、伝わる情報量がまったく違うんですよ。技工士さんのいる曜日に合わせて診療の予約を入れてもらえれば、細かい部分の相談まで1回でしっかりできる。そういうメリットもあります。

──専門的なことはわかりませんが、なんだか良さそうな気がしますね。

専門の技工士さんがいることで、すべてにおいて確実なステップが踏める。結果として満足のいく入れ歯ができる。これが最大のメリットだと思います。型取りした模型を見ながら相談して、どうしても気になる部分があれば、もう一度型取りして検討し直す、ということもできますから。結果、完成度も高くなります。これができるのは入れ歯専門の技工士さんが週2回きてくれるという環境があってのことだと思います。

カラーリングラボ(ワタナベ歯科内にある義歯の色合わせ専用スペース)での打ち合わせ風景。技工士が参加することで多くのメリットがうまれるという

──ところで入れ歯も、定期的な検診って必要なんですか。

入れ歯も定期的なチェックが必要です。部分入れ歯の金具にたわみが出て、ゆるくなったりもしますし、長期的なことでいうと、歯ぐきの退縮(※やせてくること)が起きてフィット感が変わってくることもあります。それによって歯ぐきと入れ歯の間にものが入りやすくなったりとか、いろいろなことが起きてくるわけです。その場合は微調整をしてフィット感を調整していきます。こうした手入れを「する」か「しない」かというのは、長い目で見るとかなり大きな違いだと思います。

今はご自身の歯が残っているという方が多いので、残存歯のメンテナンスも兼ねて来院していただくというケースが多いです。だいたい2〜3ヵ月に一度くらいの割合で来ていただいて、義歯と残存歯、両方をチェックするというイメージです。残っている歯がだめになってしまったら、せっかく入れ歯をつくった意味もなくなってしまいますから。

「残存歯のこの部分が将来だめになったら、入れ歯の構造をこう変えて修理しよう」とか、先々のことを考えて設計を決めることもあります。そのたびに全部を作り替えるというのでは、コストもかなりかかってしまいますので、前もって工夫をしておくわけです。どこまでいったら作り替えなければならないかとか、そういったアドバイスも定期的なチェックをしていくなかで、していきます。

まずは保険でつくってみて、あとから
アップグレードという人も多いです

──よくわからないので、まず保険で入れ歯をつくってみたい、という人も多いと思うんですが、その場合には、どのような対応をしてもらえるんでしょう。

最初に保険で義歯を作ってもらい、実際に使ってみて大丈夫かを確認する。そういう方もかなりいらっしゃいますよ。なかには嘔吐反射(※とくに上顎側の入れ歯でなる人が多い)が起きてしまって、入れ歯がどうしても使えないという方もいます。その場合は可能であればインプラントという選択肢になりますが、高齢で外科手術に抵抗がある方もいらっしゃいますし、糖尿病などの医科的な理由があるので、外科手術は避けたいという方もいます。

入れ歯が実際に使えるかどうか、確認してみるというステップも大事だと思います。問題なく使えるけれども喋りづらい、ということであれば、自費で入れ歯をつくって解決していくことは可能です。一方、保険でつくってみて、それでまったく問題なかったという方もいます。やはり人それぞれですね。

──保険で入れ歯をつくってみて、大丈夫そうだから自費にしてみたい、というケースもあったりするんでしょうか。

上下とも入れ歯という方の場合、最初に上だけ自費でつくってみたい、という方もいらっしゃいます。実際に使ってみたら非常にいいので、これなら下も自費にしたい、という方は実際多いです。保険と自費の違いは、ひと言で言えば素材の違いと、かける手間と時間の違い。それが口のなかに入れたときに違和感がない、耐久性がある、といった違いにつながってくるんですね。

──実際、そんなに違うものなんですか。

自費でつくってみて「保険とは全然違うんですね」とおっしゃる方はやはり多いです。これは型取りの精度や使う材料の違いも大きいと思います。自費の方が精度、材料ともよくなってくるので、フィット感、吸着も違ってきます。

──素朴な疑問なんですが、そうやってつくった入れ歯って、どれくらい使えるものなんでしょう。

保健の入れ歯は、もって2年くらいと言われていて、ダメになってきたら作り換えなければいけません。それに対して自費の場合は10年、20年使っているという方もいます。そういう方の義歯を見ると、やはりしっかりしたものをつくっているんですね。これは大事に使っているからというのも大きいです。

自費でつくった入れ歯は長持ちすることが多い。定期検診時に調整や修理なども可能とのこと

お気に入りの入れ歯をつくると、義歯にとってよくないこと(※固いものを力を入れて噛むなど)を自然に避けたり、きれいな状態を保とうという意識が出てくる方が多いんです。あるいは残っている自分の歯を大切にしよう、だから歯磨きもしっかりしよう、というように意識が変わってきた、そんな声を聞くこともよくあります。

義歯の色や細かい部分まで、自分で選び、気に入った入れ歯だから、結果的に大事にするという方はかなり多いと思います。ですから入れ歯づくりの場合、気に入ってもらえるものを作るというのも、けっこう大きな要素のひとつなんです。保険より料金がかかることは事実ですが、よく噛めて、長く使えるのであれば、それだけの価値はきっとあると思います。