入れ歯ってどこの歯医者さんで
つくっても同じですか?
そんな疑問にドクターがお答えします。
医局長 本館診療主任 林 茂雄

入れ歯ってどんなものなのか。
初歩の初歩から丁寧に説明します

──入れ歯の相談に来られる方が、一番気にすることって何でしょうか。

皆さん最初に気にされるのは、噛み心地と見た目です。部分入れ歯は金具が見えるものというイメージをもっている患者さんも多いですね。そもそも入れ歯が、どういうものなのか、まったくわからない、そういう患者さんもけっこういらっしゃいます。初めてつくる場合はわからなくて当たり前ですよね。

──説明は、いつもどんな感じでしているんですか。

まずは実物の模型を触ってもらって、この入れ歯が口のなかに入ったらどうなるか、というイメージをつかんでもらいます。インプラントにしたときとの噛み心地の対比とか、そういったことももちろんお話しますし、入れ歯の場合も健康保険の範囲内でつくる場合と、自費診療(※保険外での治療。以下、自費と表記)でつくった場合にどういった違いが出てくるのかとか、そういったことは最初の段階で、かなり細かくお話していきます。

たとえば自分の歯の場合、自身の体重程度の力で噛むことができます。インプラントも同程度の力で噛むことができますが、義歯の場合は15〜20㎏程度ということが多いです。これはかなり大きな違いです。

──そんなに違うんですね。

具体的な数値があると、イメージもわきやすいですよね。それで今までと同じように噛めるようにしたい、ということで結果的にインプラントになるケースも多いんですが、全身疾患があったり、骨の状態によってはインプラント治療がどうしてもできない、という方もいらっしゃいます。その場合に、すぐ保険で入れ歯をつくりましょうというのではなく、自費も含め、さまざまな選択肢があるということが大事だと思っています。

──保険と自費ってよく聞きますが、かなり違うものなんでしょうか。

設計の自由度という点では、自費の方がかなり高いです。ワックスアップと呼ばれる模型をつくって入れ歯が入ったら実際にどうなるかを患者さんに確認してもらいますが、そのときになるべく見えにくい位置に金具を配置したり、いろいろな工夫ができる。金具が絶対に見えないようにするのは、なかなか難しいですが、どうしても見た目が気になるということであれば、金具を使わない入れ歯というのもありますので、そういったものを検討することも可能です。

入れ歯といっても、じつにさまざまなタイプがある

入れ歯の模型もベース部分を左右で違う素材にしたものを用意して、実際に触ってもらいます。右が保険で使われるレジン(※樹脂の一種)、左が自費で使う金属という模型がありますが、これは手で触っただけでも厚みの違いがはっきりとわかります。口のなかは髪の毛1本あっただけでもかなり違和感を感じますので、この違いは大きいです。

自費で使う金属製のベースは0.7〜1.0㎜くらいの厚みで、なおかつ口蓋を覆う範囲も少なくできますので、違和感もより少なくなります。保険の場合は先ほどもお話したように、レジンと呼ばれる樹脂で口蓋の大部分を覆う構造になることが一般的で、なおかつ厚みを出さないと強度が出せないので(※厚みは2〜3㎜程度)、どうしても違和感も大きくなってしまいます。とくに上顎の場合、「ら」などのように上顎に舌をつける音は、どうしても発音がしづらくなります。

保険と自費の違いも、細かな
ところまでわかりやすく

フィット感とか、スッと収まる着脱のしやすさ、そういったものも保険と自費とでは、かなり違ってきます。たとえば高齢の方で手に麻痺が出ているような患者さんの場合、着脱が少しでもしやすくなるよう「ガイドプレーン」という誘導するような面をつけることもできます。こういったことも自費で義歯をつくるメリットのひとつだと思います。

保険でつくる入れ歯の場合、材料自体にかなり厚みが出てくるので、上顎部分の舌感(※ぜっかん。口のなかを舌で触ったときの感触のこと)が悪くて話しづらいという問題がどうしても出てきます。それを踏まえてベースの部分を薄くしたいという要望や、外から金具が見えにくくなるようにしたい、といった外見的な要望が出てくることも多いんです。

上顎を大きく覆われてしまうと熱い飲み物を飲んだときに喉をやけどしてしまう、舌と口蓋の粘膜で咀嚼して味わうので食べ物の味がよくわからなくなる、といった声もよく聞かれます。そういった問題に対して、自費ならこういうこともできます、予算的にはこれくらいになります、という提案をしていくわけです。

──仮に自費で入れ歯をつくることになった場合、どんな手順で進めていくんでしょう。

自費の場合もまず、レジンで入れ歯をつくり、それを実際に口のなかに入れてもらうことで舌感や口のなかで気になるところがないかなどを確認してもらいます。こうした検討を加えてからベース部分や金具を金属に置き換えていけば、違和感も少なくしていくことができるわけですね。

口のなかの感覚に敏感な方の場合も、こうしたステップを踏むことで、かなり違和感を減らせると思います。保険の場合ですと、型取りをしたら次はもう現物ができてくるという感じですが、自費の場合はこうした確認を何回かにわけておこなえるので、そこも大きな違いだと思いますね。

部分入れ歯の金具のかけ方も保険の場合は決まったかけ方(※歯を取り囲むように金具がかかるので、どうしても目立ってしまう)しかできないんですが、自費であれば口を開けたときに目立たないようにするなど、金具の配置や種類を工夫することも可能です。あるいはノンクラスプ・デンチャーといって、金具を使わない部分入れ歯もあります。歯の膨らみに合わせてプラスチックの材料を入れるので、歯肉の色が透けて口のなかで調和するという部分入れ歯です。前歯の場合などは、これをチョイスする方が多いですね。

──選択肢が多くなる分、打ち合わせする項目も多くなるんでしょうか。

そのとおりです。人工歯の色や形なども、いろいろなメーカーの製品から、より細かく選ぶことができます。自分の歯とのバランスを見るために写真を撮ってカラーリングラボ(※ワタナベ歯科内にある義歯の色合わせ専用スペース)で比較、確認をしてから決定するということも自費診療の場合は、かならずやっていますね。とくに部分入れ歯の場合、色合わせをおこなうことで、より自然な仕上がりになります。何段階かのステップを踏みながら確認していくことで、途中で何か起きたときにも修正が効く。これもメリットのひとつです。

入れ歯に使われる義歯もメーカーによって色、形などが微妙に異なる

──義歯の色は、どんなものが人気なんでしょう。

歯の色の好みは本当に人それぞれです。歯科医の立場からすると自然に見える方がいいのかな、と思ってしまいがちなんですが、患者さんによっては、より白くしたいという方もいらっしゃいますし、少し色がずれていても、白い方がいいという方もいらっしゃいます。その場合も本当にその色でいいのか、樹脂から金属へ置き換える段階で、もう一度最終確認するというステップをかならず入れています。日をあらためて確認してみたら「やっぱりもうちょっと自然な色の方が……」ってなることもありますから。

色がどうも合っていないということで口腔内の写真を撮り直して再度修正する、というようなことも、けっこうやります。実際に入れ歯を作る前には、さらにもう一度「試適〈してき〉」といって患者さんと確認をするステップも入れています。問題がないことが確認できてから、初めて次のステップに進む。完成品で思っていたイメージとズレがあったりすると、仕上がりも残念なことになってしまいますから、そうならないように前段階でかならず摺り合わせと確認をするわけです。こうした地道な積み重ねが最終的な満足度に大きく影響してくると思います。